【建設業許可】他社の代表取締役のままでは経管・専技になれない?退任の方法と注意点

専門行政書士が解説

【建設業許可】他社の代表取締役のままでは経管・専技になれない?退任の方法と注意点

「以前経営していた会社の代表取締役のままになっている」「家族の会社の代表取締役を引き受けている」。
そんな方が、建設業許可の常勤役員等(経営業務の管理責任者、いわゆる経管)や営業所技術者(専任技術者、いわゆる専技)になろうとすると、そのままでは申請できないことがあります。

結論からお伝えすると、福岡県の手引きでは、他の法人の代表取締役は、常勤役員等や営業所技術者と兼務できないとされています。
申請する前に、他社の代表取締役を外れておく必要があります。

さらに、取締役が1人だけの会社では、辞任届を出すだけでは代表取締役を外れられません。
この記事では、福岡県の手引きと会社法をもとに、他社の代表取締役を外れる方法と注意点を解説します。
他県で申請する場合は、扱いが違うことがあるので提出先にも確認してください。

1.他社の代表取締役のままでは、常勤役員等にも営業所技術者にもなれません

①手引きで「兼務できない」とされています

ポイント:他の法人の代表取締役・清算人は兼務できません

建設業許可の常勤役員等や営業所技術者は、申請する会社に常勤していることが求められます。
福岡県の手引きには、注意事項として、兼務できない人が挙げられています。

赤い下線のところに「他の法人の代表取締役、清算人等」とあります。
つまり、他社の代表取締役のままでは兼務できないということです。
会社を解散したあとの清算人も、同じく兼務できない人に挙がっています。

②代表権のない取締役で、他社では非常勤なら兼務できます

ポイント:非常勤証明書は、他社の代表取締役(本人以外)が出します

他社の取締役でも、代表権がなければ、その会社では非常勤であることを証明して兼務できます。

福岡県の常勤性の確認資料では、他社の取締役を兼務している場合、「他社の代表取締役(被証明者以外)による非常勤証明書」を追加で出すとされています(営業所技術者の表にも同じ注記があり、手引き192頁にも同じ記載があります)。
本人が他社の代表取締役の場合は、①のとおりそもそも兼務できない人に当たるため、この方法は使えません。

また、代表権がなくても、他社でも常勤で働いている取締役や、他社の仕事に専念していると見られる人は兼務できません。
手引き16頁でも、他社の「常勤役員等」や「他の営業等について専任に近い状態であると認められる者」は兼務できないとされています。

③営業をやめた会社でも、登記が残っていれば注意が必要です

ポイント:手引きに「休眠中なら兼務できる」という例外は書かれていません

「何年も前に営業をやめた会社だから関係ない」と思われるかもしれません。
しかし、手引きには、営業していない会社なら兼務できるといった例外は書かれていません。
登記簿の上で代表取締役のままなら、兼務できない人に当たると考えて準備しましょう。

常勤役員等の略歴書の記載例でも、申請のときに他社の取締役・代表取締役を兼ねている場合は、建設業に関係なくても書くよう案内されています(手引き67頁)。
営業していない会社の役員でも、略歴書に書くことになるので、申請の場で分かります。

なお、最後の登記から12年がたった株式会社は「休眠会社」とされます。
法務大臣の官報公告から2か月以内に、事業を廃止していない旨の届出も登記もしないと、解散したものとみなされます(会社法第472条第1項)。
みなし解散になると、それまでの取締役は清算人に、代表取締役だった人は代表清算人になるため(会社法第478条第1項第1号・第483条第4項)、やはり兼務できない人に当たります。
長く放っておいた会社は、2.の③と同じく、清算人を外れる手続き(清算結了の登記など)が必要になります。

なお、旧有限会社(特例有限会社)には、このみなし解散の制度はありません。
何年たっても、登記の上では取締役(代表取締役)のまま残ります。

2.他社の代表取締役を外れる3つの方法

書類に署名する

申請の前に他社の代表取締役を外れる方法は、大きく分けて3つあります。
どの方法でも他社の登記が必要になるので、登記の手続きは司法書士にご相談ください。

①後任の代表取締役を決めて、代表だけ降りる

ポイント:取締役として残るなら、非常勤証明書が要ります

他社にほかの取締役がいる場合は、その人を代表取締役に選び、ご自身は代表取締役だけを降りる方法があります。
取締役としては残るので、1.の②のとおり、新しい代表取締役から非常勤証明書をもらって提出します。
誰が代表取締役を選ぶかは、取締役会のある会社は取締役会、ない会社は定款の定め・取締役の互選・株主総会と、会社によって違います。

②取締役も辞任する

ポイント:他社の役員から外れれば、非常勤証明書も要りません

他社に役員として残る理由がなければ、取締役も辞任してしまうのが分かりやすい方法です。
ただし、辞任すると取締役が法律や定款で決めた人数を下回る会社(取締役が1人だけの会社など)では、辞任届を出すだけでは外れられません。
この場合については、3.で説明します。

③会社をたたむ(解散して清算を終える)

ポイント:解散しただけでは、多くの場合「清算人」として残ります

他社がもう営業していないなら、会社をたたむ方法もあります。
ただし、会社は解散すると清算の手続きに入り、それまでの取締役がそのまま清算人になるのが原則です。

(清算人の就任)第四百七十八条
次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者

出典:会社法 第478条(e-Gov法令検索) ※第2項以下は省略

清算人も手引きで兼務できない人に挙がっているので、ご自身が清算人のままなら、解散の登記だけでなく、清算結了の登記まで済ませる必要があります。
解散のときに、株主総会で別の人を清算人に選ぶ方法もあります(詳しくは司法書士にご相談ください)。

清算では、債権者に申し出てもらう期間を2か月以上とって、官報に公告する必要があります(会社法第499条第1項)。
そのため、解散から清算結了までは少なくとも2か月かかります。
建設業許可を申請したい時期から逆算して、早めに動きましょう。

3.取締役が1人だけの会社は、辞任しても後任が決まるまで代表取締役を外れられません

会社の登記の書類

①後任が就任するまで「権利義務」が残ります

ポイント:辞任届を出しても、登記簿の上では代表取締役のままです

取締役が1人だけの会社でその人が辞任すると、会社に取締役が1人もいなくなります。
会社法では、このように役員が欠けてしまう場合、辞任した人は、新しい役員が就任するまで、引き続き役員としての権利義務を持つとされています。
代表取締役についても、同じ定めがあります。

(役員等に欠員を生じた場合の措置)第三百四十六条
役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。

出典:会社法 第346条(e-Gov法令検索) ※第2項以下は省略

(代表取締役に欠員を生じた場合の措置)第三百五十一条
代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役(次項の一時代表取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する。

出典:会社法 第351条(e-Gov法令検索) ※第2項以下は省略

この状態の取締役は「権利義務取締役」と呼ばれます。
権利義務が残っている間は、辞任による退任の登記もできないため、登記簿の上でも代表取締役のままです。
取締役が2人以上いる会社でも、辞任によって法律(取締役会のある会社は3人以上)や定款で決めた人数を下回る場合は、後任が就任するまで取締役としての権利義務が残ります。
この場合は、残る取締役の中から新しい代表取締役を選べば代表取締役からは外れられますが、取締役としては登記に残ります(2.の①と同じ状態です)。

②後任の取締役を選ぶか、会社をたたみます

ポイント:外れるには、後任の取締役に就任してもらうのが基本です

代表取締役を外れるには、株主総会で後任の取締役を選んで就任してもらうか、2.の③のとおり会社をたたんで清算結了まで進めます。
家族や知人に後任を引き受けてもらう場合、その人が会社の役員としての責任を負うことになるので、よく話し合って決めましょう。
後任が見つからないときは、裁判所に一時取締役の選任を申し立てる方法もあります(会社法第346条第2項)。

4.まとめ

以上、他社の代表取締役のままでは建設業許可の常勤役員等・営業所技術者になれない理由と、外れる方法について解説いたしました。

この記事のポイント
  • 福岡県の手引きでは、他の法人の代表取締役・清算人は、常勤役員等・営業所技術者と兼務できない
  • 代表権のない取締役で、他社では非常勤なら、他社の代表取締役(本人以外)の非常勤証明書を出して兼務できる
  • 営業をやめた会社でも、登記上の代表取締役なら兼務できないと考えて準備する(みなし解散なら清算人になる)
  • 外れる方法は、代表だけ降りる/取締役も辞任する/会社をたたむ(清算人のままなら清算結了まで)、の3つ
  • 取締役が1人だけの会社は、辞任しても後任が就任するまで外れられない(後任を選ぶか、会社をたたむ)

※福岡県「建設業許可申請等の手引き(令和5年度発行版)」 16頁・67頁・192頁、福岡県の常勤性確認資料(令和6年11月18日のお知らせ)と会社法をもとに当事務所で整理

常勤性の確認書類や、許可を取ったあとに役員が変わったときの手続きは、下記の記事で解説しています。

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