【建設業許可】決算変更届の工事経歴書で実務経験は証明できる?

専門行政書士が解説

【建設業許可】決算変更届の工事経歴書で実務経験は証明できる?

営業所技術者(専任技術者)の要件を実務経験で証明するとき、福岡県では、注文書や請求書のほかに、県土整備事務所の受付印がある決算変更届の表紙と工事経歴書も確認資料として使えます。
毎年きちんと決算変更届を出している会社なら、控えをもとに年数をそろえやすい方法です。

ただし、決算変更届の工事経歴書なら、どの年の分でも使えるわけではありません。
許可を受けていない業種の工事は、工事経歴書では「その他」としてまとめて記載するため、福岡県ではその業種の実務経験の証明には使えない扱いになっています。

この記事では、決算変更届で実務経験を証明できるしくみと、「その他」の年が使えない理由、使えない年の分を何で証明すればよいかを解説します。

1.決算変更届で実務経験を証明できるしくみ

実務経験で営業所技術者を証明する

①実務経験は「許可を受けたい業種の工事」で原則10年以上

ポイント:確認資料も「どの業種の工事か」が分かるものに限られます

建設業許可を受けるには、営業所ごとに営業所技術者を置く必要があります。
国家資格がなく、指定学科も卒業していない場合は、10年以上の実務経験で要件を満たすことになります(建設業法第7条第2号ロ)。

(許可の基準)第七条
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者

出典:建設業法 第7条(e-Gov法令検索) ※第1号・第2号イ・ハ等は省略

ここで大事なのは、「許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し」という部分です。
建設工事であれば何でもよいわけではなく、たとえば塗装工事業の許可を受けたいなら、塗装工事の実務経験が10年以上必要です。
そのため、確認資料も「どの業種の工事か」が分かるものでなければなりません。

ただし、学歴や資格によっては、必要な実務経験の期間を短くできる場合があります。
主なものは次のとおりです。

実務経験の期間を短くできる主な場合
  • 指定学科を卒業している:大学・高専は卒業後3年、高校は卒業後5年(建設業法第7条第2号イ)
  • 建設業法の技術検定(施工管理技士など)の第一次検定に合格している:1級は合格後3年、2級は合格後5年(指定学科の卒業と同じ扱い。指定建設業と電気通信工事業を除く)
  • 一部の国家資格等を持っている:免状等の交付後、資格に応じて1年・3年・5年の実務経験で認められるものがある
  • 大工・内装仕上など一部の業種:関連する業種の経験と合わせて年数を数えられる緩和がある

※出典:福岡県「建設業許可申請等の手引き」 18〜19頁・177頁・180〜181頁・191頁(要約)。資格ごとの年数は手引きの資格表で確認できます

年数が短くなる場合も、実務経験は「どの業種の工事か」が分かる確認資料で証明する必要があります。

②福岡県では決算変更届の表紙と工事経歴書も確認資料になる

ポイント:受付印のある決算変更届の表紙と工事経歴書は「契約書等」として扱われます

福岡県の手引きでは、実務経験の確認資料として「契約書等(写)(年1件以上)」と、当時の常勤を確認する書類(年金記録など)を求めています。
この「契約書等」には、契約書・注文書・請求書のほか、県土整備事務所受付印のある決算変更届出の表紙及び工事経歴書が含まれています(福岡県「建設業許可申請等の手引き」 191頁)。

福岡県「建設業許可申請等の手引き」191頁 実務経験の確認資料
出典:福岡県「建設業許可申請等の手引き」191頁(赤枠は当事務所で追加)

決算変更届の表紙(変更届出書)は、次のような書類です。
提出すると県土整備事務所で受付印が押されて控えが返ってくるので、この控えを保管しておきます。

決算変更届の表紙(変更届出書)の記入見本と県土整備事務所の受付印
決算変更届の表紙(変更届出書)の記入見本。受付印は見本として描いたものです(架空の会社)

そのうえで、手引きは契約書等について、次のような留意事項を挙げています。

契約書等(確認資料)の主な留意事項
  • 記載内容から、建設工事の種類が判別できるものに限る【重要】
  • 日付・金額・工事内容・会社名(申請者名)等のマスキングは不可
  • 注文書の場合は、許可申請者が受注したもの(発注したもの・見積書は不可)
  • 一式工事は、一式であることが明らかな場合(新築等)を除き、内訳が確認できるものに限る
  • 適法な工事に限る(資格・業者登録等)【重要】
  • 除草・伐採・剪定・除雪・清掃・側溝浚渫・保守・点検・測量・調査などは建設工事にあたらない
  • 疑問点がある場合は、追加資料の提出を求めることがある

※出典:福岡県「建設業許可申請等の手引き」 191頁(要約)

ポイント:国土交通大臣許可や他県の知事許可の会社での経験は、この方法では証明できません

手引きが確認資料に挙げているのは、県土整備事務所受付印のある決算変更届です。
実務上も、使えるのは福岡県知事許可の会社が県土整備事務所に提出した分で、国土交通大臣許可や他県の知事許可を受けていた会社の分は、この方法では認められていません。
前の勤務先が大臣許可や他県許可の会社だった場合は、3章で説明する契約書・注文書・請求書などで証明することになります。

※電子申請で提出した年の分は紙の受付印がないため、扱いは申請前に提出先の県土整備事務所へご確認ください。

そして、決算変更届の工事経歴書を使う場合も、「建設工事の種類が判別できるもの」という条件がかかります。
ここが、次の章で説明する「その他」の年の問題につながります。

2.提出する工事経歴書についての注意点

工事経歴書の「その他」

①【前提】工事経歴書は許可を受けている業種ごとに作る

ポイント:許可のない業種の工事は、まとめて「その他」として1枚に記載します

決算変更届に綴じる工事経歴書(様式第二号)は、許可を受けている業種ごとに作成します。
一方、許可を受けていない業種の工事について、福岡県の手引きの記載例には次のように書かれています。

「許可申請・届出を行わない業種について、工事実績がある場合は、一括して建設工事の種類『その他』として工事経歴書を記載してください。」

(福岡県「建設業許可申請等の手引き」 55頁)

たとえば塗装工事業の許可だけを持っている会社なら、工事経歴書は「塗装」の1枚と「その他」の1枚になります。
見比べると、違いは左上の「建設工事の種類」欄です。

工事経歴書の全体と左上「建設工事の種類」欄(塗装とその他の見本)
工事経歴書の全体と、左上の「建設工事の種類」欄(記入見本・架空の会社)

②許可業種の工事経歴書なら利用でき、「その他」の工事経歴書は利用できない

ポイント:使用できる工事経歴書は許可業種の工事経歴書

使用できる工事経歴書は許可業種欄に記載された工事経歴書です。
許可のない業種の工事は、業種ごとに分けずに「その他」という1つの区分にまとめて記載し、工事経歴書の「建設工事の種類」欄には「その他」としか書かれないため、その工事がどの業種にあたるのかは書類から分かりません。

工事経歴書の記入見本(建設工事の種類:塗装)
許可業種の工事経歴書(記入見本・架空の会社)。「塗装」と書かれているので業種が分かります
工事経歴書の記入見本(建設工事の種類:その他)
許可のない業種の工事経歴書(記入見本・架空の会社)。防水・内装・板金の工事がまとめて「その他」になっています

ポイント:その業種の許可がなかった年の工事経歴書は、確認資料として扱われません

福岡県の審査では、確認資料は「建設工事の種類が判別できるもの」に限られるため、「その他」として記載された工事は、その業種の実務経験を示す資料として扱われません。
例え、その他の工事経歴書に「塗装工事」や「内装仕上工事」など文言が入っていたとしても、実務経験の証明に使うことはできません。

なお、許可のない業種の工事を「その他」に正しく計上しておくこと自体は大切です。
「その他」を0円で届け出ていると、あとで注文書・請求書で示す実績と過去の届出が食い違ってしまいます。
「その他」への計上は食い違いを防ぐためのもので、証明そのものは注文書・請求書などで行う、と考えておきましょう。

「その他」を0円で届け出た場合に、業種追加でどのような問題が起きるかを詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

詳細はこちらから

3.使えない年は契約書・注文書・請求書で証明する

注文書・請求書で実務経験を証明する

①1年に1件以上、業種が分かる書類を用意する

ポイント:決算変更届が使えない年は、契約書・注文書・請求書を年1件以上そろえます

「その他」の年や、福岡県知事許可以外の会社にいた年の分は、契約書・注文書・請求書などで証明します。
必要なのは1年につき1件以上で、その書類から許可を受けたい業種の工事だと分かることが条件です。
工事名や内訳が「工事一式」だけで中身が分からないものは、業種が判別できないため使えないことがあります。

また、前の勤務先の書類を使う場合は、その会社から写しを出してもらう必要があります。
日付・金額・会社名などを黒塗りすることはできないので、相手先の了解を得られるかも早めに確認しておきましょう。

②申請前に、年ごとに「建設工事の種類」欄を確かめる

ポイント:決算変更届の控えを集めたら、年ごとに業種を確認してから足りない年を補います

決算変更届の控えを集めたら、まず年ごとに工事経歴書の「建設工事の種類」欄を見て、使える年と使えない年を分けましょう。

決算変更届で実務経験を証明するときの確認事項
  • 表紙に県土整備事務所の受付印があるか(福岡県知事許可の会社の分か)
  • 工事経歴書の「建設工事の種類」が、証明したい業種になっているか
  • その業種の工事経歴書が「実績なし」だけの年ではないか
  • 「その他」の年は、業種が分かる契約書・注文書・請求書を1年に1件以上用意したか
  • 経験した期間に、その会社に常勤していたことを年金記録などで確認できるか

確認資料がそろわない年があると、原則としてその年は実務経験として数えられません。
決算変更届の控えだけで足りると思って申請の準備を進めると、あとから足りない年が見つかることもあるので、早めに確認しておくことが大切です。

4.まとめ

以上、決算変更届の工事経歴書で実務経験を証明するときの注意点について解説いたしました。

この記事のポイント
  • 実務経験は「許可を受けようとする業種の工事」で原則10年以上必要(建設業法第7条第2号ロ)。学歴や資格によっては期間を短くできる
  • 福岡県では、県土整備事務所の受付印がある決算変更届の表紙と工事経歴書も確認資料になる
  • 福岡県では、確認資料は「建設工事の種類が判別できるもの」に限られる
  • 許可のない業種の工事は、工事経歴書では一括して「その他」として記載される
  • 「その他」の年の工事経歴書は、福岡県ではその業種の実務経験の証明に使えない
  • 国土交通大臣許可・他県知事許可の会社での経験も、決算変更届では証明できない(電子申請の年は県に確認)
  • 使えない年は、業種が分かる契約書・注文書・請求書を1年に1件以上用意する

実務経験の確認資料の集め方や、業種追加のときの工事経歴書の書き方を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

手元の決算変更届や請求書で実務経験の年数がそろうか分からないときは、お気軽に当事務所までご相談ください。

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