施工体制台帳とは?作成義務は5,000万円から|施工体系図・再下請負通知書も解説

施工体制台帳とは?作成義務は5,000万円から|施工体系図・再下請負通知書も解説
元請として大きな工事を受注したときに、必ず出てくるのが「施工体制台帳」と「施工体系図」です。
名前は聞いたことがあっても、どの工事から作らなければならないのか、何を書いて何を添付するのか、下請業者は何をすればよいのか、はっきり分からないまま現場が動き出してしまうことも少なくありません。
しかも、この作成義務の金額は2025年(令和7年)2月1日の政令改正で引き上げられています。
インターネット上にはまだ改正前の金額で書かれた記事も多く残っており、古い基準のまま判断してしまうと、本来作るべき台帳を作らないまま工事を進めてしまうおそれがあります。
今回は、施工体制台帳・施工体系図・再下請負通知書の3つについて、作成が必要になる工事の判断基準から、記載事項・添付書類、掲示の場所、工事が終わったあとの保存期間、作らなかった場合の処分まで、条文を挙げながら解説していきます。
なお、記事タイトルの5,000万円は民間工事の基準です。
公共工事では金額に関係なく必要になりますので、この点は第2章でご説明します。
1.施工体制台帳・施工体系図・再下請負通知書とは
この3つはバラバラの書類ではなく、ひとつの現場の下請構造を管理するためのセットになっています。
まずは全体像から確認していきましょう。

①施工体制台帳とは
ポイント:その現場に誰が入っているかを1冊にまとめた台帳です
施工体制台帳は、ひとつの工事現場に関わるすべての下請業者と技術者の情報をまとめた書類です。
どの会社がどの工事を、いくらで、いつからいつまで請け負っているのか、そこに誰が主任技術者として入っているのかを、元請が一元的に把握するために作ります。
作成するのは発注者から直接工事を請け負った元請だけで、法令上はこの元請のことを「作成建設業者」と呼びます。
作った台帳は現場ごとに備え置き、発注者から求められたときには見せなければなりません。
本社にまとめて置いておく書類ではなく、その現場に置いておく書類である点に注意してください。
②施工体系図とは
ポイント:台帳の中身を1枚の系統図にして掲示するものです
施工体系図は、施工体制台帳に書かれた下請の関係を、組織図のような枝分かれの形で1枚にまとめたものです。
元請を頂点にして、一次下請・二次下請と順に並べ、それぞれがどの工事を分担しているのかがひと目で分かるように表示します。
台帳が「詳しく書いて保管しておくもの」であるのに対して、体系図は現場の見やすい場所に掲げて見せるものという違いがあります。
③再下請負通知書とは
ポイント:下請が「うちも下に出しました」と元請へ知らせる書類です
元請は、自分が直接契約した一次下請のことは分かりますが、その一次下請がさらに下へ出した二次下請のことは、放っておけば分かりません。
そこで、下請がさらに別の業者へ工事を出したときは、その下請自身が元請へ報告する仕組みになっています。
このときに使う書類が再下請負通知書で、通知するのは元請ではなく下請側の義務です。
この3つの関係は、建設業法第24条の8にまとめて書かれています。
第二十四条の八 施工体制台帳及び施工体系図の作成等
e-Gov法令検索 建設業法第24条の8
特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。
2 前項の建設工事の下請負人は、その請け負つた建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、国土交通省令で定めるところにより、同項の特定建設業者に対して、当該他の建設業を営む者の商号又は名称、当該者の請け負つた建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
3 第一項の特定建設業者は、同項の発注者から請求があつたときは、同項の規定により備え置かれた施工体制台帳を、その発注者の閲覧に供しなければならない。
4 第一項の特定建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。
2.作成義務があるのはどんな工事?【2025年2月に金額が変わりました】
すべての工事で施工体制台帳が必要になるわけではありません。
民間工事か公共工事かで判断の仕方がまったく違うので、順番に確認していきましょう。

①民間工事は下請の総額5,000万円以上が基準です
ポイント:建築一式工事だけは8,000万円以上が基準になります
民間工事では、発注者から直接請け負った特定建設業者が、その工事のために結んだ下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)になったときに、施工体制台帳と施工体系図の作成義務が生じます。
この金額は建設業法施行令第7条の4で定められています。
第七条の四 法第二十四条の八第一項の金額
e-Gov法令検索 建設業法施行令第7条の4
法第二十四条の八第一項の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、特定建設業者が発注者から直接請け負つた建設工事が建築一式工事である場合においては、八千万円とする。
金額の数え方には、いくつか押さえておきたい決まりがあります。
間違えやすいところなので、下記で整理しておきます。
下請総額の数え方
- 1社ごとではなく総額で見る:一次下請が複数いる場合は、全部の下請契約を足した金額で判断します
- 元請と一次下請の間だけ:一次下請が二次下請に出した金額は、この総額には含めません
- 税込みで判断する:消費税を含んだ金額で見ます
- 元請が出した材料費は含めない:元請が負担した材料費や運送費は下請代金に足しません
なお、この5,000万円(建築一式工事は8,000万円)という金額は、特定建設業の許可が必要になるライン(建設業法施行令第2条)と同じ金額です。
つまり民間工事では、特定建設業の許可が必要になる規模の工事=施工体制台帳が必要になる工事と考えていただいて差し支えありません。

②2025年2月1日に4,500万円から引き上げられました
ポイント:古い基準(4,500万円・7,000万円)で書かれた情報にご注意ください
この金額は、2025年(令和7年)2月1日の政令改正で引き上げられたものです。
それ以前は4,500万円(建築一式工事は7,000万円)が基準でしたので、改正前後で判断が変わる工事があります。
たとえば建築一式工事以外の民間工事で下請総額が4,800万円だった場合、改正前であれば施工体制台帳の作成が必要でしたが、現在は必要ありません。
インターネット上の解説記事や、手元にある少し前の書式集・チェックリストには古い金額のまま残っているものが多いので、社内の手順書をお使いの場合は一度見直しておくことをおすすめします。
③公共工事は金額に関係なく必要です
ポイント:下請契約を1件でも結べば作成義務があります
公共工事の場合は、まったく別の考え方をします。
公共工事を発注者から直接請け負った建設業者は、下請契約を1件でも結んだ時点で、金額に関係なく施工体制台帳と施工体系図が必要になります。
これは入札契約適正化法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)第15条第1項が、建設業法第24条の8を読み替えて適用するように定めているためです。
第十五条 施工体制台帳の作成及び提出等
e-Gov法令検索 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第15条
公共工事についての建設業法第二十四条の八第一項、第二項及び第四項の規定の適用については、これらの規定中「特定建設業者」とあるのは「建設業者」と、同条第一項中「締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になる」とあるのは「下請契約を締結した」と、同条第四項中「見やすい場所」とあるのは「工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所」とする。
読み替えの中身を整理すると、公共工事では次の3点が民間工事と変わります。
公共工事で変わる3つのこと
- 特定建設業者に限られない:「特定建設業者」が「建設業者」に読み替えられるため、一般建設業の許可でも対象になります
- 金額の下限がない:「政令で定める金額以上になる」が「下請契約を締結した」に読み替えられます
- 掲示場所が増える:施工体系図は「工事関係者が見やすい場所」に加えて「公衆が見やすい場所」にも掲げます
ここで押さえておきたいのが、「公共工事」の範囲です。
入札契約適正化法第2条第2項は、公共工事を「国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事」と定義しています。
公共性が高い工事や補助金が入っている工事という意味ではなく、発注者が誰かで決まるという点に注意してください。
第二条 定義(第二項)
e-Gov法令検索 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第2条
2 この法律において「公共工事」とは、国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事をいう。
「特殊法人等」は同条第1項で要件が定められており、そのうえで政令に列挙された法人だけが該当します。
独立行政法人などが幅広く含まれる一方で、民間企業が発注する工事は、公共性の高い施設の工事であっても公共工事にはあたりません。
判断に迷う発注者の工事があれば、契約前に確認しておくと安心です。
さらに公共工事では、作成した施工体制台帳の写しを発注者へ提出する義務もあります(同条第2項)。
ただし、建設キャリアアップシステム(CCUS)などを使って発注者が台帳の記載事項を確認できる措置を講じている場合は、提出が不要になります。
また、発注者から現場の施工体制の点検を求められたときは、これを拒むことができません(同条第3項)。
④技術者の現場専任の4,500万円とは別の基準です
ポイント:似た金額が複数あるので、何の基準かを必ず確認しましょう
建設業法には金額の基準がいくつも出てくるため、混同されることがよくあります。
特に間違えやすいのが、主任技術者・監理技術者を工事現場に専任で置かなければならない4,500万円の基準との取り違えです。
こちらは工事1件の請負代金の額で判断するもので、建築一式工事の場合は9,000万円と、施工体制台帳の8,000万円とも数字が違います。
この4,500万円は、古い数字ではなく現行の基準です。
技術者の現場専任の基準も施工体制台帳と同じ2025年(令和7年)2月1日に、4,000万円(建築一式工事は8,000万円)から引き上げられました。
前の項でご説明した「古い基準の4,500万円」は施工体制台帳のほうの話ですので、混ざらないようご注意ください。
なお、現場専任が必要になるのは金額だけで決まるわけではありません。
建設業法第26条第3項は、公共性のある施設や多数の方が利用する施設に関する重要な建設工事に限って専任を求めており、その具体的な範囲は建設業法施行令第27条第1項各号(国や地方公共団体が発注者である工事、学校、病院、共同住宅、事務所、工場など)に列挙されています。
似ているが別物の2つの基準
- 施工体制台帳・特定建設業許可:下請契約の総額 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)/建設業法施行令第2条・第7条の4
- 技術者の現場専任:工事1件の請負代金 4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)/建設業法第26条第3項・施行令第27条第1項

3.施工体制台帳に書く内容と添付書類

施工体制台帳に何を書くかは、建設業法施行規則第14条の2で細かく決められています。
項目数が多いので、まずは大きな4つのかたまりで押さえていきましょう。
①記載事項は会社と工事に分けて整理されています
ポイント:元請と下請それぞれの「会社」と「工事」、そして作業員の情報を書きます
施工体制台帳の記載事項(施行規則第14条の2第1項)
- 元請自身のこと:許可を受けている建設業の種類、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況
- 元請が請け負った工事のこと:工事の名称・内容・工期、発注者と契約した年月日と発注者の情報、契約した営業所、監督員や現場代理人、主任技術者または監理技術者の氏名と資格、監理技術者補佐を置く場合はその氏名
- 下請業者のこと:商号または名称と住所、建設業者であれば許可番号と許可を受けた業種、社会保険の加入状況
- 下請が請け負った工事のこと:工事の名称・内容・工期、下請契約を結んだ年月日、監督員や現場代理人、下請が置く主任技術者の氏名と資格
これらに加えて、元請・下請いずれについても、その工事に従事する作業員一人ひとりの情報(氏名・生年月日・年齢、職種、社会保険の加入等の状況、建設業退職金共済の被共済者かどうか、安全衛生教育の内容、保有資格)を書くことになっています。
この部分が、次でご説明する作業員名簿にあたります。
②作業員名簿も施工体制台帳の一部です

ポイント:2020年10月から、施工体制台帳の一部として作成が必要になりました
作業員名簿は、以前は現場ごとの慣行として作られていた書類でした。
それが2020年(令和2年)10月1日施行の施行規則改正で記載事項に加えられ、施工体制台帳の一部として作成が義務づけられた書類になっています。
国土交通省のホームページでは、施工体制台帳・施工体系図・再下請負通知書とあわせて、作業員名簿の作成例もエクセルファイルで公開されています。
なお「作業員名簿」という言葉は法令には出てこず、省令が定めているのは「建設工事に従事する者に関する事項」です。
国土交通省が様式の名称として使っている呼び方だとお考えください。
この作成例には現場ID・事業者ID・技能者IDという欄がありますが、これはCCUSに登録している場合に記載するもので、登録していなければ記載は不要とされています。
※出典:国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」(「令和2年10月1日以降に契約する建設工事において使用する作成例」として掲載)/国土交通省「作業員名簿(作成例)」
③健康保険証が廃止された今、代わりに何を集めればよいのか
ポイント:原則はCCUSの登録情報。未登録なら「資格情報のお知らせ」か「資格確認書」です
作業員名簿には社会保険の加入状況を書く必要があるため、元請が下請に対して健康保険証の写しの提出を求めるという実務が広く行われてきました。
ところが健康保険証は2024年12月2日に新規発行が終了し、経過措置も2025年12月1日までで終わっています。
そのため現在は健康保険証の写しで確認することはできません。
これについては、国土交通省が2024年11月6日付けの事務連絡で、建設業団体あてに確認方法を整理して示しています。
その内容をまとめると、次のとおりです。
健康保険の加入状況の確認方法
- 原則:CCUSの登録情報を活用して確認する。この場合、下請から保険の証明書類を集めること自体が不要になります
- CCUS未登録でマイナ保険証を持っている作業員:保険者から発行される「資格情報のお知らせ」の写し、またはマイナポータルに表示される被保険者資格情報のPDFや印刷物
- CCUS未登録でマイナ保険証も持っていない作業員:保険者から発行される「資格確認書」の写し
- 共通の注意:いずれも保険加入状況の確認に必要な事項以外は黒塗りしたものを使います
※出典:国土交通省不動産・建設経済局建設振興課 事務連絡「健康保険証の廃止に伴う現場作業員の健康保険の加入証明書類について」(令和6年11月6日)
ここでひとつ、整理しておきたい点があります。
そもそも保険証の写しの添付は、施行規則が求めている添付書類には入っていません。
省令が求めているのはあくまで作業員名簿に社会保険の加入等の状況を記載することであり、元請が写しの提出を求めているのは「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に基づく現場入場管理の実務です。
この2つは根拠が別なので、元請から求められた書類がどちらの話なのかを確認しておくと、やり取りがスムーズになります。

④添付書類は4種類です
ポイント:契約書の写しと、配置する技術者の資格・雇用を証明する書類がいります
施工体制台帳には、施行規則第14条の2第2項で定められた書類を添付します。
第十四条の二 施工体制台帳の記載事項等(第二項)
e-Gov法令検索 建設業法施行規則第14条の2
2 施工体制台帳には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 前項第二号ロの請負契約及び同項第四号ロの下請契約に係る法第十九条第一項及び第二項の規定による書面の写し(作成建設業者が注文者となつた下請契約以外の下請契約であつて、公共工事(入札契約適正化法第二条第二項に規定する公共工事をいう。以下同じ。)以外の建設工事について締結されるものに係るものにあつては、請負代金の額に係る部分を除く。)
二 前項第二号ホの主任技術者又は監理技術者が主任技術者資格又は監理技術者資格を有することを証する書面(当該監理技術者が法第二十六条第五項の規定により選任しなければならない者であるときは、監理技術者資格者証の写しに限る。)及び当該主任技術者又は監理技術者が作成建設業者に雇用期間を特に限定することなく雇用されている者であることを証する書面又はこれらの写し
三 監理技術者補佐を置くときは、その者が監理技術者補佐資格を有することを証する書面及びその者が作成建設業者に雇用期間を特に限定することなく雇用されている者であることを証する書面又はこれらの写し
四 前項第二号トに規定する者を置くときは、その者が主任技術者資格を有することを証する書面及びその者が作成建設業者に雇用期間を特に限定することなく雇用されている者であることを証する書面又はこれらの写し
条文が長いので、実務上そろえる書類として整理すると次のようになります。
契約書の写しで注意したいのは、金額を伏せてよい範囲です。
第1号のかっこ書きは「作成建設業者が注文者となつた下請契約以外の下請契約」と書いていますので、請負代金の額を除いた写しでよいのは、元請が当事者になっていない二次下請以下の契約書に限られます。
元請と一次下請の間の契約書は、金額が入ったままの写しが必要です。
そもそも公共工事では、この除外自体が適用されません。
施工体制台帳に添付する書類
- 契約書の写し:発注者との請負契約書、および下請契約書の写し
- 技術者の資格を証する書面:主任技術者・監理技術者の資格を証明する書類(法第26条第5項により選任しなければならない監理技術者の場合は、監理技術者資格者証の写しに限られます)
- 技術者の雇用を証する書面:その技術者が雇用期間を特に限定することなく雇用されていることを証明する書類
- 監理技術者補佐等を置く場合の書面:監理技術者補佐や、その他の施工の技術上の管理をつかさどる者を置くときの資格・雇用を証明する書類(第3号・第4号)
技術者が常勤していることを示す資料は、建設業許可の申請でも求められる場面が多いものです。
年金記録を使った証明については、下記の記事で詳しく解説しています。

なお、施工体制台帳も添付書類も、紙で保管しなければならないわけではありません。
現場で必要に応じて画面や紙面にはっきりと表示できる状態であれば、電子データで備え置くことが認められています(施行規則第14条の2第3項・第4項)。
4.施工体系図の書き方と掲示のルール

①施工体系図に書く内容
ポイント:現に工事を施工している下請だけを載せます
施工体系図の記載事項は、施行規則第14条の6で定められています。
元請の商号または名称、工事の名称と工期、発注者の商号または名称、元請が置く主任技術者または監理技術者の氏名などを表示したうえで、下請ごとの情報を系統的に並べます。
ここで注意したいのが、載せる下請の範囲です。
条文は「現にその請け負つた建設工事を施工しているもの」と書いており、契約はしたけれどもまだ着手していない下請や、工事が終わって現場を離れた下請は、その時点の体系図には載せないという整理になります。
工事の進み方に合わせて、体系図も更新していく必要があるということです。
また、下請が建設業者でない場合(軽微な工事のみを請け負う無許可の業者など)は、記載する項目が少なくなります。
会社については商号または名称と代表者の氏名だけ、工事については工事の内容と工期だけを書けばよいこととされています。
②掲示する場所は工事の種類で変わります
ポイント:公共工事は通行人からも見える場所への掲示が必要です
民間工事の場合、施工体系図は「当該工事現場の見やすい場所」に掲げます。
条文はこれ以上の指定をしていませんが、次にご説明する公共工事の読み替えと対比すると、民間工事で求められているのは工事関係者が見られる場所だと理解されています。
実務では、現場事務所の入口付近などに掲示するのが一般的です。
一方で公共工事の場合は、入札契約適正化法第15条第1項の読み替えによって、掲示場所が「工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所」となります。
工事関係者向けとは別に、通行する人からも見える位置にもう1枚掲げる必要があるということです。
掲示物という点では建設業許可票と似ていますが、根拠となる条文も掲げる場所も別のものですので、それぞれ用意してください。

③いつまで備え置き・掲示するのか
ポイント:工事の完成ではなく「引渡し」までが期限です
施工体制台帳の備置きと施工体系図の掲示は、いつまで続ければよいのでしょうか。
施行規則第14条の7は、目的物の引渡しをするまでと定めています。
第十四条の七 施工体制台帳の備置き等
e-Gov法令検索 建設業法施行規則第14条の7
法第二十四条の八第一項の規定による施工体制台帳(施工体制台帳に添付された第十四条の二第二項各号に掲げる書類及び第十四条の五第一項後段に規定する書類を含む。)の備置き及び法第二十四条の八第四項の規定による施工体系図の掲示は、第十四条の二第一項第二号の建設工事の目的物の引渡しをするまで(同号ロの請負契約に基づく債権債務が消滅した場合にあつては、当該債権債務の消滅するまで)行わなければならない。
工事が終わった時点ではなく、目的物を発注者へ引き渡すまでという点に注意してください。
完成検査から引渡しまでに時間が空く工事では、その間も現場に備え置き・掲示を続ける必要があります。
④引渡しで終わりではありません。5年・10年の保存義務があります

ポイント:現場での備置きが終わっても、営業所での保存が続きます
ここが見落とされやすいところです。
現場での備置き・掲示は引渡しまでですが、書類そのものを捨ててよいわけではありません。
建設業法第40条の3は、営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と一定の図書を保存するよう定めており、施工体制台帳と施工体系図はここに引き継がれます。
引渡し後の保存期間
- 施工体制台帳(技術者・下請に関する部分):帳簿の添付書類として引渡しから5年間。発注者と締結した住宅を新築する工事は10年間(施行規則第26条第2項第3号・第28条第1項)
- 施工体系図:営業所に保存する「図書」として引渡しから10年間(施行規則第26条第5項第3号・第28条第2項)
保存を怠った場合は、建設業法第55条第5号により10万円以下の過料の対象になります。
過料は前科がつく刑事罰ではありませんが、金銭的な制裁であることに変わりはありません。
工事が終わって現場をたたむときに、台帳と体系図を営業所へ引き揚げるところまでを段取りに入れておいてください。
5.下請がすること|再下請負通知書

ここまでは元請側の義務を見てきましたが、下請の立場でも、やらなければならないことがあります。
それが再下請負通知です。
①元請からの通知が出発点になります
ポイント:元請から「この現場は台帳を作る現場です」と知らせが来ます
下請の側からは、その現場が施工体制台帳を作る現場なのかどうかは分かりません。
そこで施行規則第14条の3は、元請が作成建設業者に該当することになったときは、遅滞なく下請に対して次の2つを書面で通知し、あわせて同じ内容を現場の見やすい場所に掲げなければならないと定めています。
元請から下請へ通知される内容
- 作成建設業者の商号または名称:どの会社が施工体制台帳を作るのか
- 再下請負通知が必要である旨と提出先:さらに下請へ出したときに再下請負通知を行うこと、その書類をどこへ出すか
この通知を受け取ったら、その現場は施工体制台帳を作る現場だということです。
自社がさらに下請へ工事を出す場合には、再下請負通知の準備が必要になります。
②再下請負通知書に書く内容と提出のタイミング
ポイント:下請へ出す都度、遅滞なく提出します
再下請負通知書の記載事項は、施行規則第14条の4第1項で定められています。
大きく分けると、自社に関することと、新たに工事を出した相手方に関することの2つです。
再下請負通知書に書くこと
- 自社のこと:商号または名称、住所、建設業者であれば許可番号
- 自社が請け負った工事のこと:工事の名称、注文者の商号または名称、注文者と下請契約を結んだ年月日
- 新たに工事を出した相手方のこと:商号または名称と住所、許可番号と許可業種、社会保険の加入状況
- その相手方が請け負った工事のこと:工事の名称・内容・工期、契約年月日、監督員や現場代理人、主任技術者、その工事に従事する作業員の情報、特定技能外国人や技能実習生の従事状況
3つ目と4つ目は、施工体制台帳の記載事項をそのまま引いています。
つまり実質的には作業員名簿に相当する情報まで用意する必要があるということです。
また、その相手方と結んだ請負契約書の写しも添付します。
この写しについては、公共工事以外の工事であれば請負代金の額の部分を除くことができます。
提出のタイミングは、工事を請け負わせる都度、遅滞なくとされています。
工事が終わってからまとめて出すのではなく、契約するたびに提出するものだとお考えください。
さらに、自社が下請へ出すときには、元請が自社に対して行ったのと同じように、その下請に対しても「この現場は再下請負通知が必要な現場である」という内容を書面で通知する必要があります。
第十四条の四 再下請負通知を行うべき事項等(第二項)
e-Gov法令検索 建設業法施行規則第14条の4
2 再下請負通知人に該当することとなつた建設業を営む者(以下この条において「再下請負通知人該当者」という。)は、その請け負つた建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせる都度、遅滞なく、前項各号に掲げる事項を記載した書面(以下「再下請負通知書」という。)により再下請負通知を行うとともに、当該他の建設業を営む者に対し、前条第一項各号に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
なお、再下請負通知が必要になるのは、建設業を営む者へ工事を請け負わせた場合です。
資材の購入や、建設工事にあたらない役務の契約であれば、再下請負通知の対象にはなりません。
ここまでご説明した3つの書類は、国土交通省が作成例をエクセルファイルで公開しています。
様式が決まっているわけではありませんが、記載事項を漏れなく満たした形になっていますので、ゼロから作るより確実です。
下記からダウンロードできます。
国土交通省の作成例(エクセル)
- 施工体制台帳:作成例をダウンロード
- 施工体系図(樹状図形式):作成例をダウンロード
- 施工体系図(表形式):作成例をダウンロード
- 再下請負通知書:作成例をダウンロード
- 作業員名簿:作成例をダウンロード
- 施工体制台帳等のチェックリスト:ダウンロード
※出典:国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」(令和2年10月1日以降に契約する建設工事において使用する作成例)。本記事の記入例の画像は、この作成例の記載欄をもとに当事務所が作成したものです。
6.作成義務がないケース・よくある勘違い

ここまでとは逆に、施工体制台帳を作らなくてよい場面も整理しておきましょう。
現場では「念のため作っておく」という運用もありますが、法令上どこまでが義務なのかは押さえておきたいところです。
①下請の立場で受けた工事に作成義務はありません
ポイント:台帳を作るのは発注者から直接請け負った元請だけです
建設業法第24条の8第1項は「発注者から直接建設工事を請け負つた場合」と定めています。
ですから、一次下請や二次下請の立場で受けた工事については、たとえその金額が5,000万円を超えていても、施工体制台帳を作る義務はありません。
下請の立場で発生するのは、前章でご説明した再下請負通知のほうです。
②下請を使わない工事は対象外です
ポイント:自社の職人だけで仕上げる工事なら金額に関係なく不要です
施工体制台帳は、下請構造を把握するための書類です。
そのため、下請契約をまったく結ばず自社の社員だけで施工する工事であれば、請負金額がいくら大きくても作成義務は生じません。
これは公共工事でも同じで、入札契約適正化法が求めているのも「下請契約を締結したとき」だからです。
③一般建設業の許可でも公共工事なら必要です
ポイント:「うちは一般だから関係ない」という思い込みが一番危険です
もっとも気をつけていただきたいのが、この点です。
施工体制台帳は特定建設業者の義務だという理解が広まっているため、一般建設業の許可しか持っていない会社は自分には関係がないと考えてしまいがちです。
ところが公共工事では「特定建設業者」が「建設業者」に読み替えられますから、一般建設業の許可でも、公共工事を元請として受けて下請に出せば作成義務があります。
公共工事の元請を初めて経験されるときは、必ず確認しておいてください。
7.作らなかった場合は7日以上の営業停止処分の対象です

①罰金ではなく監督処分の対象です
ポイント:刑事罰はありませんが、営業そのものが止まります
施工体制台帳を作らなかったこと自体には、建設業法に懲役や罰金といった刑事罰の定めはありません。
その代わりに、許可行政庁(福岡県知事許可であれば福岡県知事)による監督処分の対象になります。
建設業法第28条第1項は、建設業者が同法の規定に違反した場合に必要な指示ができると定めており、そのかっこ書きで、入札契約適正化法第15条第1項によって読み替えて適用される第24条の8も対象に含めています。
営業停止処分の根拠は同条第3項で、1年以内の期間を定めて営業の全部または一部の停止を命じることができるとされています。
なお、第4章でご説明した引渡し後の保存義務を怠った場合は、こちらには10万円以下の過料があります。
「建設業法上まったく金銭的な制裁がない」というわけではない点は、あわせて押さえておいてください。
刑事罰がないと聞くと軽く思えるかもしれませんが、実際にはむしろ重い結果になります。
営業停止処分を受けると、停止された期間と営業の範囲については、入札も見積りも含めて一切の営業ができなくなるからです。
軽微な工事も請け負えなくなります。
ただし、営業のすべてが止まるとは限りません。
監督処分の基準は、公共工事に関する不正行為なら公共工事に係る営業を、それ以外の工事に関する不正行為ならそれ以外の工事に係る営業を停止するという整理をしており、業種や地域が限定されることもあります。
また、処分を受ける前に締結していた請負契約に基づく施工や、許可・経営事項審査の申請、瑕疵の修繕、請負代金の請求と受領などは、停止期間中も行うことができます。
②処分の基準は7日以上の営業停止です
ポイント:作らなかった場合も、虚偽の内容で作った場合も同じ基準です
国土交通省の「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」は、施工体制台帳等の不作成について、7日以上の営業停止処分を行うと定めています。
これは作成を怠った場合だけでなく、虚偽の施工体制台帳や施工体系図を作成した場合も同じ扱いです。
福岡県知事許可の業者についても、扱いは変わりません。
福岡県は独自に「福岡県建設業法に基づく監督処分の基準」を定めていますが、その内容は国の基準にそろえられており、施工体制台帳等の不作成はやはり7日以上の営業停止処分とされています。
※出典:国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準について」/福岡県「『福岡県建設業法に基づく監督処分の基準』の一部改正について」(同ページの「改正後全文」PDFに記載)
③福岡県では指名停止も重なります
ポイント:営業停止が7日でも、入札に参加できない期間はもっと長くなります
福岡県の資料によると、営業停止処分を受けた場合、その期間に応じて1か月から9か月の指名停止が別に科されます。
さらに経営事項審査でも、その年度の審査で減点されます。
営業停止の日数だけを見て判断すると、実際の影響を小さく見積もってしまうことになります。
福岡県が公表している違反事例にも、施工体制台帳がからむものがあります。
民間の建築一式工事を直接請け負った特定建設業者が、下請へ工事の主たる部分を一括下請負するとともに施工体制台帳と施工体系図も作成しなかったとして営業停止処分を受けた事例や、公共工事で一括下請負を隠すために虚偽の施工体制台帳と施工体系図を作成して営業停止処分を受けた事例が挙げられています。
いずれも一括下請負とセットになっている点が特徴的です。
施工体制台帳がきちんと作られていない現場は、下請の構造が外から見えません。
福岡県が挙げている2つの事例も、いずれも一括下請負とセットになっていました。
台帳と体系図を正確に作っておくことは、それ自体が一括下請負を疑われないための備えにもなる、とも言えそうです。
一括下請負については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

8.まとめ

以上、施工体制台帳・施工体系図・再下請負通知書について解説いたしました。
最後に、この記事の要点をまとめておきます。
この記事のまとめ
- 民間工事:発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請総額5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の下請契約を結んだときに必要
- 2025年2月1日改正:4,500万円・7,000万円から引き上げられました。古い基準の情報にご注意ください
- 公共工事:金額に関係なく、下請契約を1件でも結べば必要です。一般建設業の許可でも対象になります
- 作業員名簿:施工体制台帳の一部として、社会保険の加入等の状況を記載します。加入を確認するための書類は、健康保険証の廃止後はCCUSの登録情報か「資格情報のお知らせ」「資格確認書」を使います
- 施工体系図:現場の見やすい場所へ掲示します。公共工事は公衆が見やすい場所にも掲示します
- 備置き・掲示の期間:目的物の引渡しをするまでです
- 引渡し後の保存:施工体制台帳は5年間(発注者と締結した住宅新築工事は10年間)、施工体系図は10年間、営業所で保存します
- 再下請負通知書:さらに下請へ出した下請が、その都度遅滞なく元請へ提出します
- 作らなかった場合:刑事罰はありませんが、監督処分の基準では7日以上の営業停止処分とされています。福岡県では指名停止も重なります
施工体制台帳と施工体系図は、書類の量が多く、工事の進行に合わせて更新も必要になるため、現場の負担が大きい書類です。
それでも、下請構造を正確に把握しておくことは、一括下請負や無許可業者への発注といった重大な違反を防ぐことにもつながります。
作成義務がある工事かどうかの判断に迷われたときは、契約の段階でご相談いただければと思います。
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