個人事業主でも建設業許可は取得できる?

個人事業主でも建設業許可は取れる?
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個人事業主でも建設業許可は取得できる?
1.建設業許可は個人事業主でも取得できます

法人化していない個人事業主でも建設業許可を取得することが可能です。
家族経営で建設業をされている方も従業員がいない一人親方でも許可を取得できます。
建設業の許可は「軽微な建設工事」だけを請け負って営業する場合を除き、必ず取得しなければなりません。
「軽微な建設工事」に該当しない範囲で受注をする場合は許可が必要ありませんが、様々な理由で許可が求められる状況が出てくることがあります。
この記事では、許可の要件だけでなく、許可がなくてもできる工事の範囲・個人事業主ならではの注意点・費用・法人成りしたときの許可の扱いまで、順に解説いたします。
①許可要件は法人の場合と同じ

結論から申し上げると、個人事業主の建設業許可の新規申請要件は基本的に法人が申請する場合と同じです。
要は、わざわざ建設業許可を取得するために法人化する必要などないということです。
建設業許可6つの要件
①誠実性・欠格要件
法人であれば、その役員(非常勤を含む)、個人事業主であれば本人が、請負契約やその履行において詐欺、脅迫、横領などの「不正な行為」または「不誠実な行為」を行うことが明らかな場合、建設業の許可を取得することはできません。
また、建設業法で定められた欠格要件に該当しないことが求められます。具体的には、以下のような場合が該当します。
- 許可に相応しくない行為をした者、または財産管理能力や意思能力に問題がある者
- 建設業法違反により営業停止などの処分を受け、その処分期間が経過していない者
- 破産者で復権を得ていない者
- 精神障害により建設業を営むために必要な判断や意思疎通ができない者
②営業所
営業所とは、本店、支店、または常時建設工事の請負契約を締結する事務所を指し、以下の要件を満たすものです。
- 建設工事の請負契約締結等の業務を実際に行っていること。
- 電話、机、事務台帳等を備えていること。
- 来客用の応接スペースを有し、居住スペースや他の法人、個人事業主と明確に区分され、独立性があること。
- 営業用事務所として使用権限を有していること。
- 看板や標識等で建設業の営業所であることを明示していること。
- 経営業務の管理責任者が常勤していること。
- 専任技術者が常勤していること。
③財産的基礎要件
許可申請時に「倒産することが明白である」場合を除き、次のいずれかの基準を満たす必要があります。
- 自己資本(貸借対照表の純資産合計)が500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 過去5年間許可を受けて継続営業した実績があること
※一般建設業許可の場合
④社会保険の加入
事業者が、健康保険・厚生年金・雇用保険に関し、適用される事業所である場合は、上記などの社会保険に加入していることが確認できることが必要です。
ただし、雇用のない一人親方であれば建設業法上の社会保険に関しては原則適用対象外となり、いずれも加入していなくても問題ありません。
⑤営業所技術者(専任技術者)
許可を取得するには、各営業所に専任技術者を配置することが義務付けられています。従業員を雇わず、一人で事業を行う場合、個人事業主自身が専任技術者に該当する必要があります。
次の条件のいずれかを満たす必要があります。
- 業種ごとに必要とされる国家資格の取得
- 10年以上の実務経験
- 指定学科の卒業と3年~5年の実務経験
⑥常勤役員等(経営業務の管理責任者)
個人事業主においては、経営の管理・執行経験がある本人が管理責任者となります。要件として建設業に関し5年以上の経営経験が必要です(2020年10月の改正で、許可を受けたい業種かどうかは問われなくなりました)。
上記の要件をクリアすればOKです。
要件について詳細を知りたい方は下記の記事をご覧ください
②建設業許可は業種ごとに申請が必要
建設業の許可を取得しても、すべての種類の工事を行えるわけではありません。
建設業法に定められた異なる業種の工事を行う場合には、新たにその業種の許可を取得する必要があります。
例えば、建築一式工事の許可を持っている会社が内装工事を請け負うことはできません。もし請け負う場合には、内装工事の許可を新たに取得しなければなりません。
業種ごとの許可要件を確認したい場合は下記からご確認ください。
2.個人事業主ならではの3つのポイント
許可要件そのものは法人と同じですが、実際に申請を進めていくと、個人事業主ならではの勘所が出てきます。
①本人ひとりで常勤役員等(経営業務の管理責任者)と営業所技術者(専任技術者)を兼ねられます
ポイント:従業員がいない一人親方でも許可は取得できます
「経営業務管理責任者と専任技術者の2人を用意しなければならないのでは」というご質問をいただくことがあります
結論としては、事業主ご本人が両方を兼ねることができます。
専任技術者は営業所ごとに常勤していることが求められますが、個人事業主の場合、営業所に常勤しているのは事業主ご本人です。
経営経験も技術者としての要件もご本人が満たしていれば、それで足ります。
つまり、従業員をひとりも雇っていない一人親方の方でも、建設業許可の取得は十分に可能です。
②個人事業主期間が5年以上あれば常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件を満たせる可能性が高いです
ポイント:常勤役員等(経営業務の管理責任者)の証明には確定申告書が必ず必要になります
個人事業主の場合、確定申告書の控えが必ず必要です。
経営業務管理責任者としての5年以上の経営経験は、その期間分の確定申告書の控えで証明することになります。
あわせて、その年の工事の実績が分かる工事請負契約書や注文書、請求書の提出を求められることもあります。
また、その期間個人事業主期間であったことを証明するための年金記録(被保険者記録照会回答票)も用意しましょう。
被保険者記録照会回答票の取り方は、下記の記事で詳しく解説しています。

5年分をさかのぼって集めるのは想像以上に大変です。
将来的に許可を考えているのであれば、今のうちから毎年の控えを確実に保管しておいてください。
③一人親方は社会保険が原則として適用外です
ポイント:雇用者がいない場合は社会保険加入証明が原則不要
建設業許可では社会保険への加入が要件のひとつになっていますが、これは「適用される事業所であれば加入していること」という意味です。
雇用する従業員がいない一人親方の場合、健康保険・厚生年金・雇用保険のいずれも原則として適用対象外となり、加入していなくても許可を受けられます。
注意が必要なのは、従業員を雇い始めたときです。
常時5人以上の従業員を使用する事業所になると健康保険・厚生年金の適用事業所となり、従業員を1人でも雇えば雇用保険の適用事業所になります。
許可を取得した後に人を雇う予定があるのであれば、その時点で加入手続きが必要になることを見込んでおきましょう。
3.費用と必要書類
①申請手数料と行政書士報酬

個人事業主が建設業許可を取得する際の費用は、以下の3つに大きく分けられます。
- 申請手数料
- 添付書類取得費用
- 行政書士報酬
基本的に必要となるのは、申請手数料と添付書類を取得するための費用です。
加えて、行政書士に依頼する場合には、10万円から20万円程度の報酬がかかります。
| 許可の種類 | 新規申請の手数料 |
|---|---|
| 大臣許可 | 150,000円 |
| 知事許可 | 90,000円 |
②個人事業主の申請で必要になる主な書類
ポイント:集めるのに時間がかかるのは過去の実績を示す書類です
申請書そのものは様式に沿って作成すれば済みますが、時間がかかるのは添付書類のほうです。
個人事業主の申請でとくに必要になるものを挙げておきます。
個人事業主が用意する主な添付書類
- 確定申告書の控え:経営経験の年数分。収受印またはe-Taxの受信通知が必要です
- 工事の実績を示す資料:工事請負契約書、注文書と請書、請求書と入金の記録など
- 資格証明書または実務経験の証明資料:専任技術者の要件を資格で満たすか、実務経験で満たすかによって変わります
- 身分証明書と登記されていないことの証明書:本籍地の市区町村と法務局で取得します
- 納税証明書:知事許可の場合は個人事業税の納税証明書です
- 財産的基礎を示す資料:500万円以上の残高証明書など
身分証明書と登記されていないことの証明書は、名前から想像しにくいのですが、いずれも欠格要件に該当しないことを示すための書類です。
本籍地が遠方の場合は郵送で取り寄せることになりますので、早めに動いておくと安心です。
公的書類の取得場所は下記の記事にまとめています。

4.法人成り・相続のときに許可はどうなる
個人事業主として許可を取ったあと、事業が伸びて法人化を考える方は少なくありません。
そのときによくいただくのが、「せっかく取った許可は法人に引き継げないのか」というご質問です。
①法人成りするなら事業承継の認可を使います
ポイント:あらかじめ認可を受ければ許可を引き継げます
かつては、個人事業主が法人成りすると、法人として建設業許可を取り直す必要がありました。
しかし令和2年10月の改正により、あらかじめ認可を受けることで、個人の許可を法人へ引き継げるようになっています。
(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)第十七条の二
建設業法(e-Gov法令検索より引用)
建設業者が許可に係る建設業の全部(略)の譲渡を行う場合(略)において、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、国土交通省令で定めるところにより次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡及び譲受けの日に、譲渡人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
一 譲渡人が国土交通大臣の許可を受けているとき 国土交通大臣
二 譲渡人が都道府県知事の許可を受けているとき 当該都道府県知事(以下略)
条文にある「あらかじめ」という言葉が、この制度のいちばん大事なところです。
法人を設立して事業を移してから申請するのではなく、承継する日より前に認可を受けておかなければなりません。
認可の審査には一定の期間がかかりますので、法人成りの日程を決める前に、まず認可のスケジュールから逆算して動く必要があります。
順番を間違えると、結局は法人として新規の許可を取り直すことになり、その間は500万円以上の工事を請けられない空白期間が生まれてしまいます。
②事業主が亡くなったときは30日以内に相続の認可を
ポイント:30日以内に申請すれば許可の空白期間が生じません
個人事業主の建設業許可は、事業主ご本人に与えられたものです。
そのため、事業主が亡くなると許可の効力も失われるのが原則ですが、相続についても承継の制度が用意されています。
(相続)第十七条の三
建設業法(e-Gov法令検索より引用)
建設業者が死亡した場合において、当該建設業者(略)の相続人(略)が被相続人の営んでいた建設業の全部を引き続き営もうとするとき(略)は、その相続人は、国土交通省令で定めるところにより、被相続人の死亡後三十日以内に次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者に申請して、その認可を受けなければならない。
2 相続人が前項の認可の申請をしたときは、被相続人の死亡の日からその認可を受ける日又はその認可をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした建設業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。
期限は死亡後30日以内です。
この期間内に申請しておけば、第2項により、亡くなった日から認可が下りる日までは相続人が許可を受けているものとして扱われます。
逆に、30日を過ぎてしまうと相続の認可は使えず、相続人がゼロから新規で許可を取り直すことになります。
ご家族で建設業を営んでいる場合は、この30日という期限があることだけでも共有しておいていただきたいところです。
5.それでも要件は満たせない場合・・許可がなくてもできる工事の範囲とは
ここまで許可の取り方を見てきましたが、そもそも建設業許可は、すべての工事に必要なわけではありません。
「自分の請ける工事の規模なら、まだ許可はいらないのでは」とお考えの方も多いと思います。
①軽微な建設工事だけなら許可はいりません
ポイント:1件500万円未満(建築一式は1,500万円未満)が目安です
建設業法は、許可を受けなければならないと定めたうえで、ただし書で例外を設けています。
その例外が「軽微な建設工事」です。
(建設業の許可)第三条
建設業法(e-Gov法令検索より引用)
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(略)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
では「軽微な建設工事」とは何かというと、これは建設業法ではなく政令に書かれています。
(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)第一条の二
建設業法施行令(e-Gov法令検索より引用)
法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
3 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
つまり、1件あたりの請負代金が500万円未満の工事だけを請け負っているうちは、許可がなくても違法にはなりません。
建築一式工事の場合は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅であれば同じ扱いになります。
②500万円の数え方には注意が必要です
ポイント:注文書を分けても金額は合算されます
「500万円を超えそうだから、契約を2本に分ければよいのでは」と考えてしまいそうですが、これは通用しません。
先ほどの施行令第1条の2第2項に、分割して請け負うときは各契約の合計額で判断すると明記されています。
さらに、金額の数え方には次の3つの注意点があります。
500万円を数えるときの3つの注意点
- 消費税を含めた金額で判断します:税抜き480万円でも、消費税を加えると528万円となり500万円を超えます
- 契約を分けても合算されます:正当な理由がある場合を除き、各契約の合計額で判断されます
- 材料を注文者が用意する場合はその分も加えます:材料の市場価格と運送賃を請負代金に足した額で判断します
とくに材料支給のケースは見落とされがちです。
「手間だけで400万円だから大丈夫」と思っていても、支給された材料が200万円分あれば合計600万円となり、許可が必要な工事になります。
500万円の判断と契約の分割については、下記の記事で詳しく解説しています。
③無許可で請け負うと3年以下の拘禁刑です
ポイント:罰金を受けると5年間は許可が取れなくなります
許可を受けずに500万円以上の工事を請け負った場合の罰則は、決して軽いものではありません。
第四十七条
建設業法(e-Gov法令検索より引用)
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだとき。
(二号以下略)
そして、こちらの方が実務上は深刻かもしれません。
建設業法違反で罰金刑を受けると、その刑の執行を終えた日から5年間は建設業許可を受けられなくなります(建設業法第8条第8号)。
目先の1件のために、その後5年間の仕事を失うことになりかねません。
500万円を超えそうな話が出てきた時点で、早めに許可の準備を始めることをおすすめいたします。
6.まとめ
以上、建設業許可を個人事業主でも申請できるのかについて解説いたしました。
要件そのものは法人と変わりませんが、経営経験や財産的基礎を確定申告書で証明する点、そして法人成りや相続のときに承継の認可という制度がある点は、個人事業主ならではの論点です。
とくに法人成りの認可は「あらかじめ」受けておく必要がありますので、法人化をお考えの方は早めにご相談ください。
建設業許可を新規で取得しようと考えている方
建設業許可は取得した後の
フォローが重要です

5年ごとの更新手続き・毎年の決算変更届の提出
必ず行わなければなりません
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